雑記

雑な記録。略して雑記。

夏川草介『神様のカルテ0』、辻村深月『島はぼくらと』

 田舎。

私には縁がないと思っていた。

しかし、気づいたら「田舎」と(少なくとも東京では)称されるところに住むことになった。

「田舎」と言えば何をイメージするだろう。

閉鎖的な人間関係。閑散とした商店街。出ていく若者。残される高齢者。

私の貧困な想像力ではそんなところだろうか。

今回はそんな「田舎」 と言ったら失礼かもしれないが を舞台とした小説を二作取り上げる。

 

神様のカルテ0

神様のカルテ0

 

神様のカルテ』の1〜3巻を文庫で買ったため、0巻も文庫だと思い込んでおり、長いこと検討はずれのところでアンテナを張っていた。

ところが、この度近所の書店を徘徊していたところ、たまたま文芸のコーナーに平積みされていて、思いがけぬ邂逅を果たした。嬉しくて値段も見ずにすぐにレジに持っていった。文庫の2倍の金額が店員さんによって宣告された。4桁……だと……

とはいえ、予想に違わず面白い。医学部時代の辰也と千夏のラブラブストーリー()「有明」、大蔵省がツンデレだと判明する「彼岸過ぎまで」、研修医時代の一止が相も変わらず奮闘する「神様のカルテ」、ハルの前日譚である「冬山記」の4編の短編が収録されている。 中でも「冬山記」のハルの言葉は今の私には染みます。

「でも、山の中でいろんな人に出会って、少しずつ気が付いたんです」

(中略)

「一人ぼっちなのは自分だけじゃない。人はみんなひとりなんだって」

(中略)

「ひとりだってことは、嬉しいことも哀しいことも全部自分が引き受けるってことです。だったら毎日を大切に積み上げて、後悔しないようにしたい」

「でもそれってなんか、すごく苦しいことじゃない?」

(中略)

「本当に苦しいのは、自分だけが一人ぼっちだって思うことです。そうして、何もかも投げ捨ててしまうことです。そんなの、間違っていますし、悲しいですし、なにより、かっこ悪いです」

こちらを読んで無性に山登りをしたくなったけれど、寒くなってきてしまい実現しなかった。かっこ悪い。でも、来年もこちらにいるはずだから、来年こそは。

 

島はぼくらと (講談社文庫)

島はぼくらと (講談社文庫)

 

 気づいたら買っていた。この表現が一番しっくりくる。

いや、hontoの講談社のキャンペーンに便乗したというのは確かに記憶しているのだけれど、でも数多あるキャンペーン対象書籍の中からこの一冊を釣り上げた経緯は全くもって不明だ。辻村深月という名前を前々から見かけてはいたけれど手にとってなかったから気になっていたのだろうか。

とはいえ、出会いこそそんな風にあやふやだったけれど、出会ってからはいともたやすく親睦を深められた。島に暮らす少年少女、そして大人の生活が上手に描かれている。

島生活への反動なのか少し派手で小生意気な源樹・衣花と、穏やかな気候を反映したのか垢抜けず素朴な性格の朱里・新の高校生四人組が、大人と関わりながら思いを深めていく。

個人的にはメインの四人組ではなく、島にやってきた所謂Iターンである本木と蕗子の各々の話が印象に残っているけれど、盛大なネタバレになるのでやめておこう。

 

 

ところで、「医療」という面でも両者は通ずるところがある。といっても、『島はぼくらと』では『神様のカルテ』ほどどストレートに取り上げられるわけではないが、やはり田舎と医療には切っても切れない関係があるということか。高齢者が増加し、過疎化が進めばそりゃ医療が問題になってくるに決まっている。

 

 

なお、現在私の暮らしている「田舎」は店が少ないことを除けば殆ど都会の暮らしと変わらない。あれ、これなんて下位互k(ry

※実際には足、つまりは田舎の必須アイテムこと車及び免許を持っていない私が悪いだけです本当にありがとうございました。