己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己はしあわせになれるだろう。だのに、己の中の人間は、その事を、此の上なく恐しく感じているのだ。ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思っているだろう!
一人で引きこもっている時間が長くなると、全てがどうでもよくなる時がある。
その時、『山月記』のこの一節を思い出す。
獣として、何も考えずただ生きていれば、確かにしあわせかもしれない。だが、人間として、それは何と恐しく、哀しく、切ないことだろう。
そのことを忘れないでいたい。
- 作者: 中島敦
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