吉本ばなな『キッチン』
ふと大昔に途中まで読んで放り出していた小説を読んだ。
目次に並んでいるのは以下の4つ。
- キッチン
- 満月—キッチン2
- ムーンライト・シャドウ
- そののちのこと(文庫版あとがき)
このうち私の心を最も引いたのは「そののちのこと(文庫版あとがき)」であった。
「キッチン」を読んでいても「満月—キッチン2」を読んでいても「ムーンライト・シャドウ」を読んでいても何処か腑に落ちなかったが、「そののちのこと(文庫版あとがき)」で少しスッキリしたからだ。
感受性の強さからくる苦悩と孤独にはほとんど耐えがたいくらいにきつい側面がある。それでも生きてさえいれば人生はよどみなくすすんでいき、きっとそれはさほど悪いことではないに違いない。もしも感じやすくても、それをうまく生かしておもしろおかしく生きていくのは不可能ではない。そのためには甘えをなくし、傲慢さを自覚して、冷静さを身につけた方がいい。多少の工夫で人は自分の思うように生きることができるに違いない
ほんの少しずつではあるが「そうかもしれないなあ」と思っていたことを上手に言葉にしてもらった気がし、
愛する人たちといつまでもいっしょにいられるわけではないし、どんなすばらしいことも過ぎ去ってしまう。どんな深い悲しみも、時間がたつと同じようには悲しくない。そういうことの美しさをぐっと字に焼きつけたい
そうか、それを「美しい」と捉えるのか、と感心した。
どうにもやりきれなくなった時にまた読みたい。