雑記

雑な記録。略して雑記。

海を眺めながら

あまりにもすることがなく、島の名を擁する公園に行ってきた。本当に島というわけではなく、陸と砂の道で結ばれている。


歩いて1時間くらいで辿りついただろうか。その公園の掲示を見つけてからが長かった。某隊の敷地沿いに延々と歩き、釣り人を眺めていたら水たまりに足を踏み入れてしまった。自動車に追い越され、自転車に追い越され、鳥に見下ろされながら黙々と歩いた。


着いても何かがあるわけではない。早くも子供が海水浴に興じていたり、テントを張っている人々がいたりしたが、私が持ってきたのは1冊の小説だけである。有島武郎小さき者へ・生まれ出ずる悩み』。


有島武郎の作品を読んだことが実はない。なぜか本棚に紛れ込んでいたので持ってきた。海に臨んで約100年前の小説を読むのもなかなか乙だと思った。


公園の中を進むと神社があった。後ろから入るような格好となり、鳥居をくぐると目の前に海が広がっていた。悪くない場所である。岩に腰掛け、読み始めた。


母を亡くした子たちに父が宛てた手紙のような小説である。母がいた頃を振り返り、愛を語り、子に力強くエールを送る。20頁もない掌編である。


しかし私は気づけば読み終わる前に立ち上がっていた。思いのほか岩というのは座り心地がよくない。


こうして私は公園を後にした。親子が砂浜でテニスボールを打ち合い、若い男女の群れが背を向けて右手を挙げ、ワンピースの真似事を写真に収めているのを横目に、とぼとぼと舗装された道路を歩いた。


帰りにたまたまプリン屋を見つけた。店の方はとても愛想よく私を迎えてくれた。きっと美味しいであろうピーナッツプリンを携え、私はまた歩き出した。


行け。勇んで。小さき者よ。