雑記

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『左ききのエレン』のキャラクターについて好きなように語る〜山岸エレン〜

『左ききのエレン』のキャラクターについて好きなように語る〜朝倉光一〜 - 雑記

 

職場の方に『左ききのエレン』を布教してきましたので、その勢いで続きを書きます。

 

 

「天才になれなかったすべての人へ」という作品を描く以上、天才の存在は必須です。天才がいなければ自分が天才なのか凡人なのかも分かりませんから。

 

山岸エレンは天才として用意された存在です。『左ききのエレン』は「天才になれなかったすべての人へ」がテーマである以上、朝倉光一が主人公であるはずなのですが、なぜかタイトルはエレンの名前です。そしてタイトルに取り上げられているだけあってエレンも物語の中心にいますので、「天才である一部の人へ」が裏のテーマなのかもしれません。

 

 

そんな天才であるエレンも人は人なので、というか絵(目)の才能だけが突出していて、それ以外は普通の人なので、悩みは——才能の大きさに比して強烈ではありますが——平凡です。私のような凡人でも共感できます。もしその才能を持っていたとしたら、きっとそんな気持ちになったであろうと。そのあたりは同じ天才を扱う『響〜小説家になる方法〜』とは異なります。

響も小説家としての天稟を与えられていますが、エレンと異なりひたすら真っ直ぐです。真っ直ぐ過ぎて凡人に共感はできません。真っ直ぐ筋は通っているので理解はできるかもしれませんが、自分より明らかに強い相手に躊躇いなく暴力を振るう響に共感できる凡人はいないでしょう。

 

 

その点、エレンは凡人でも共感の嵐です。強大な才能が周囲を傷つけてしまう恐怖。周囲の勝手な期待に対する反発。一つの才だけが飛び抜けている故に他のことができない劣等感。乱暴にまとめるなら、天才故の弱さとでも申しましょうか。その弱さには凡人でもうんうんと頷けます。『ピンポン』大好き太郎こと私はすぐにスマイルを思い出します。

スマイルも天才故の弱さに苛まれます。エレンと違って感情表現は豊かではありませんが、その優しさや才能の受け止めきれなさは似ています。

 

 

しかしスマイルは卓球の世界から身を引いてしまいますが、エレンには今のところその気配はありません。優しい天才のその先に何があるのか。光一と再び交わることはあるのか。続きが楽しみです。