雑記

雑な記録。略して雑記。

人間

己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己はしあわせになれるだろう。だのに、己の中の人間は、その事を、此の上なく恐しく感じているのだ。ああ、全く、どんなに、恐しく、哀しく、切なく思っているだろう!

一人で引きこもっている時間が長くなると、全てがどうでもよくなる時がある。
その時、『山月記』のこの一節を思い出す。
獣として、何も考えずただ生きていれば、確かにしあわせかもしれない。だが、人間として、それは何と恐しく、哀しく、切ないことだろう。
そのことを忘れないでいたい。

福本伸行『アカギ』、『中間管理録トネガワ』

「ざわ・・・ざわ・・・」をはじめとする独特な表現で人々を魅了してきた福本作品ではあるが、まさかスピンオフであるとはいえ「このマンガがすごい!」で1位を獲得する日が来るとは思っていなかった。

というかこの作品が1位で大丈夫なのだろうか。

言っちゃなんだが完全にギャグマンガなのだが・・・ 

中間管理録トネガワ(4) (ヤングマガジンコミックス)

中間管理録トネガワ(4) (ヤングマガジンコミックス)

 

とはいえ面白いのは紛れもない事実である。

原作では「もはやギャグだろ」としか思えないような大仰な表現を用いながらも飽くまで真剣勝負として描いていたのに対し、本当にギャグにしてしまったのが本作と言えよう。

ネットで数々のネタにされていたことからもポテンシャルは感じられていたが、作品にしたらまさかこんなにギャグにハマるとは。むしろこちらのほうが表現に沿った作品なのではないかと思ってしまう。

 

アカギ 33 (近代麻雀コミックス)

アカギ 33 (近代麻雀コミックス)

 

本家の作品も新刊が出ていた。

「1話で1牌打つか打たないか」で賭けが成立しかねないほどに進行が遅いことに定評がある『アカギ』だが、33巻でも期待を裏切らず数牌だけ打って終わった。

一体何巻でどんな終わりを迎えるのだろう。

吾妻ひでお『失踪日記』『失踪日記2アル中病棟』、卯月妙子『人間仮免中』『人間仮免中つづき』

生活リズムが乱れていたせいか、孤独な生活を長く続けすぎたせいか、何となく気分が落ち込むことが増えていた。 

しかし己より遥かに酷い境遇にある方々がそれでも前向きに生きているのを見ると、ほんの少しだけ元気が湧いてくる。

今回はそんな漫画を紹介する。

 

失踪日記

失踪日記

 

 

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟

 

鬱や不安で突然仕事を放り出して失踪したり、酒浸りになった末にアル中病棟にぶちこまれたりする様をコミカルに描いている。

これだけ悲惨な目にあっても笑えるように描けるということに凄みを感じた。 

 

 

人間仮免中

人間仮免中

 

 

吾妻ひでおのようにコミカルには描いていないけれども、統合失調症になり身も心も打ちのめされているにもかかわらず前向きに生きていこうという様が伝わってくる。

読むと暫く呆然としてしまうくらいには力強い。

 

 

どうでもいいが、どちらも1巻と2巻の色合いが似ている。最初は出版社が同じだからかと思ったが、『人間仮免中つづき』はイースト・プレスからではなく小学館から出ている。ふーむ。

keep early hours

「早起きは三文の得」という言葉がある。
実際には早く起きてもお金を落とすこともあれば事故に遭うこともあるのだが、しかし健康に良いことは確かだ。
早く起きれば早く寝てまた早く起きるため、自然と早寝早起きの規則正しい生活をするようになる。
早く起きれば朝食も早い時間に摂るため、昼休みには空腹になっており飯が美味い。
良いことづくめである。
そのことを最近実感した。
ということは、つまり最近は生活リズムが乱れていたということだ。
おかげさまで肌は荒れ、こちらの記事も書かなくなり、心身ともにボロボロだった。
この土日になってようやく一息ついた気分である。
また年末に向けてバタバタするが、生活リズムはあまり乱さないように気をつけよう。

空と山

私は冬はあまり好きではない。
寒く乾燥しているからだ。


寒いと服を余計に着なければならない。クールビズが終わり、ネクタイを締めなければいけなくなる。コートを着て出勤したら、ロッカーにそれを掛けに行かないといけない。
乾燥すると肌がカサカサになり、風邪も引きやすくなる。起きたとき喉がカサカサする。寒さとのダブルパンチで深夜に目が覚めてしまうこともある。


しかし、物事には正負の側面があることがほとんどだ。
冬も悪いことばかりではない。
そう、空気が澄むので、空と山がとても綺麗に見えるのである。


快晴の日の青空は見ていると心も晴れてくる。
星が瞬く夜空はロマンチックだ。心が闇に呑まれ泣きたくなることもあるけれど、それでも美しい。
雪化粧をした峰々は「俺を見ろ」と言わんばかりだ。こうしたときは山に囲まれたこの土地をありがたく思う。
雄大な自然は狭量な私を少しだけおおらかにしてくれる。
喜ぶことにも悲しむことにも疲れてしまった私を癒してくれる。


気付くと下を向いていることも多いけれど、目を上げることを忘れないようにしよう。

陶酔

その人が幸せなら
笑顔でいられるなら
そう思うと 辛くても
自分の気持ちは
奥へ奥へと
追いやって
しまえばと思う
自分の心を
大切にすることは
難しくて
相手にも 自分にも
心を隠して
そうやっていつも
逃げ出してしまうのだ
それが
最善の選択なのだと
思い込んでいる限り

こえ恋(2) (アクションコミックス(comico books))

こえ恋(2) (アクションコミックス(comico books))

自分を
好きになってほしい
選んでほしいという
気持ちより
向こうを嫌な気持ちに
させたくない方が勝る…
そんなの
あり得ないって
綺麗事言って
いい人ぶりたい
だけだって
思っていたのに
好きだから
もう
ダメ  
本当に
好きになると
何も出来ないんだ……
諦めよう
この人を    
幸せに出来るのは
私じゃない

ピーター・J・ベントリー『家庭の科学』、青木皐『人体常在菌のはなし』

私は率直に申し上げて科学が得意ではありません。

数式を見ると目眩がするとは言わぬまでも手が止まります。化学式は見てもちんぷんかんぷんです。現象のメカニズムや人体の仕組みもさっぱり分かりません。

しかし分からないながらも興味はあります。

せめて分かったつもりになれないか。

というわけで、今回は楽しく読める科学本を紹介します。

 

家庭の科学 (新潮文庫)

家庭の科学 (新潮文庫)

 

図書館でぶらぶらしているときにたまたま目につき、借りて読んでみたらこちらがめっぽう面白い。

ある男の一日を科学的に分析するというストーリーなのですが、もうこの男がびっくりするくらい悲惨な目にあいます。寝坊するわ鞄を忘れるわガムを髪にくっつけるわ日常生活で起こりうる惨事をこれでもかとばかりに経験します。そしてその原因や過程を著者が冷静に説明します。そのギャップがまた笑えます。 

同じ新潮文庫ですと、サイモン・シン氏のシリーズは以前興味深く読んだ覚えがあります。サイモン・シン氏は科学にまつわるエピソードを劇的に描くのが非常にうまいです。

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

 
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

 

 

 

 

人体常在菌のはなし ―美人は菌でつくられる (集英社新書)

人体常在菌のはなし ―美人は菌でつくられる (集英社新書)

 

こちらは立花隆氏と佐藤優氏が次々と教養本を紹介していく『ぼくらの頭脳の鍛え方』で紹介されていて買った覚えがあります。そして購入以降しばらく放置していましたが、この度ようやく通読した次第です。

タイトルのとおり人体に常在している菌のお話なのですが、著者の菌愛が尋常ではありません。「かわいい常在菌」とか「菌が喜ぶ」とかそういう表現が頻繁に出てきます。しかも語り口がやたら軽い。

冬でも超ミニスカートで生足、ハイソックスという格好の女子高生。これもやめた方がいい。「大丈夫、流行りの毛糸のパンツ穿いてるから」といったって、やはり冷えるだろう。なかには生ヘソまで出している娘もいる。やめなさい。伊達の薄着は育菌違反なのである。私としては、菌虐待行為で逮捕したいくらいである。 

終始とは言わぬまでも、しばしばこんな調子です。こうしたノリが好きな方は楽しく読めるでしょう。あと上の書影にはありませんが、帯が『もやしもん』ですので、『もやしもん』ファンは必読……かもしれません。

 

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)