施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』、玉川重機『草子ブックガイド』
本を読むことが億劫になっていた時期があった。
自分は読んでも読んでも忘れるのだ。
周りの方々は読んだ本についてすらすら語れるのに、自分は固有名詞からまず出てこない。
こんなんなら、読んでも仕方ないんじゃないか。
そう考えて、距離を置いたこともあった。
でも、気づいたら本に手を伸ばしているのだ。どうにもこうにも断ち切れない。
それなら、忘れてしまっても何か残っているのではと信じることにした。
それに、何も残らなくても、読んでいる間は夢中になっているではないか。
そのことに意味を見出してもいいのではないか。
まあ、気休めに過ぎないけれど、最近はちょっとだけ気楽に読書できるようになった。
というわけで、今回のテーマは「読書」である。
私の周りでは以前から話題になっており、この度ついにアニメ化した。
主な登場人物は四人である。労せずして読書家になりたい町田さわ子(自称「バーナード嬢」)、「一昔前にベストセラーになった本を読むのが好き」という一癖も二癖もある遠藤くん、そんな遠藤くんに密かな想いを寄せている図書委員のシャーロキアン長谷川さん、SFマニアで最初は町田さわ子に激怒していたもののいつの間にかただのツンデレになっている神林しおり。そんな四人が本を巡ってグダグダ語るだけなのだけれど、これが滅法面白い。
しかし何故か私の印象に最も残っているのは作者のコラムだ。2巻の【宮沢賢治①】【宮沢賢治②】の2本立てのコラムで、宮沢賢治の「告別」という詩が取り上げられる。なお、「告別」は青空文庫で読める。(下から3番目なのでかなりスクロールしないといけない。)
孤独な毎日の中、漫画家になるべく不断の努力を重ねたのかというと、僕はまったく何もしていなかった。漫画はさっぱり描いていなかったし、そんなことより「告別」を暗記することに、全精力を注いでいた。詩集も「告別」以外は読みもしなかった。
身も蓋もないのだが、この身も蓋もなさがなんかいい。そんな漫画である。
こちらはちゃんと(?)読書する女の子が主人公である。
しかし能天気な町田さわ子に比べてこちらの内海草子は重い。
お父さんは画家崩れの呑んだくれで、草子は口下手で友達がいないときている。
しかし書物を通じて、少しずつ周囲と分かり合い、成長していく。
絵の巧さも圧倒されるけれど、草子が物語を血肉としていく様子がよく描かれていて、さらには本のカバーも凝っており、あらゆる面で完成度が高い。
実は読んだのは随分前なのだけれど、こうして紹介していたらまた読みたくなってきた。読むか。