私は将棋界のニュースにさえ疎いので、先崎先生が休場していたことを存じませんでしたが、読んで衝撃を受けました。
失礼ながら、この本の存在を知ったとき、「まさか、あの先崎学が」と思いました。私の中では軽妙洒脱な文章を書かれる明るい先生のイメージがあったからです。
しかし、本書を読んでうつ病が思いのほか身近なものに感じられました。まあ、私の周りにもいるにはいるのですが、それほど突っ込んだことを聞いたことはなかったので、改めて文章にされると理解が身体に染みてきたという感じでしょうか。
やはり私も大して強くないながらも将棋を指すので、7手詰めを解けなかったときのショックは想像するだに辛いです。私でさえ7手詰めは簡単なものなら数秒あれば解けます。それをプロの先生が解けないなんて、どん底という言葉では足りないくらい落ち込んだと思います。いや、もはや落ち込むという感情の動きすらなかったかもしれませんが。
同時に読んでいて私も感情が無になって脳が硬直することがあるので、「もしかして」なんて思わなくもありませんでした。眠れているので大丈夫かとは思いますが、無理しないようにしよう。
単純にエッセイとして面白く、しかも勉強になる一冊です。