読書記録

読んだ本の内容を思い出せないことが増えてきたので、何でもいいから記録を残すことにしました。ネタバレもありますのでご注意ください。

佐藤優『人に強くなる極意』、森博嗣『夢の叶え方を知っていますか?』

どうにもこうにも調子が出ない。

そういうこともあります。

そんな時、生活リズムを整えるとか栄養バランスの良い食事を摂るとかそういった正攻法もあります。が、たまには奇をてらって新書、しかもハウツー本を読むという気分転換を図るのもありかなと。

というわけで、今回はたまたま家にあった新書と本屋で目についたハウツー本新書をご紹介します。

 

8つの「ない」から人に強くなろうという本です。

怒らない、びびらない、飾らない、侮らない、断らない、お金に振り回されない、あきらめない、先送りしない。

当然と言えば当然のことが書いてありますが、不調というのは当然のことができなくなることを言いますので、そういった意味では良いチョイスでした。

 

内容は題名のとおり、夢の叶え方について。

これまた当たり前と言えば当たり前なのですが、夢というのは自分のものであって、そこに他人を介入させては他人の夢になってしまいます。

そういうことをよくよく分からせてくれるので、他人に流されやすい方が読むといいかもしれません。

渡辺ペコ『にこたま』、西尾維新『結物語』

 

さよならだけが人生だ。そんなフレーズがあります。

私の知る限り不老不死の人間はいませんので、いずれ誰でも死という終着点に至り、この世の縁とはおさらばします。その意味でこのフレーズは正しい。仲が良かろうと悪かろうと、疎遠だろうと身近だろうと、最終的にはバイバイが待っています。

しかしながら、生きているその間においては、別れもあれば出会いもあります。人生という大きな括りでは別離に集約されてしまいますが、括ってしまうまでの道中には幾多の結びつきの生成消滅があるでしょう。一度別れた人と再び付き合うこともあれば、その再び付き合った人と別れてしまうこともあります。

それを諸行無常と悟れれば楽なのでしょうが、なかなかそううまくはいきません。

 

にこたま コミック 全5巻完結セット (モーニングKC)

にこたま コミック 全5巻完結セット (モーニングKC)

 

こちらは友人の恋人さんに紹介していただきました。

どうしても私は「にこたま」と言うととある駅名を思い浮かべずにはいられないのですが、どうも世間では違うようです。

それはさておき、こちらの『にこたま』は、「長年うまくやってきたカップルの片割れがやらかしてしまい、はてさてどうする」というお話。

理性と感情のすれ違いが上手に描かれており、冷静に振り返ると話の展開はかなりぶっ飛んでいるのですが、読んでいる最中は自然な進行に思えます。人生と同じですね。

(以下、浮気されてしまったあっちゃんとその女友達の会話)

人の心ってそもそも自由なものだよね?

あたしたちは自由な意思と選択によって一緒にいるけど

別に契約や約束をしたわけじゃないし

あたしが怒ったり妨げたりする権利ってそもそもないんだよなあって

 

でもあっちゃんかなしくなかった?

 

……かなしかったよ

 

一緒にいる大事な相手を

不愉快にさせたり悲しませないっていうのはルールじゃなくてマナーとモラルだよ

約束や契約がなくても信頼があるならそれ破っちゃダメだよ

 

結物語 (講談社BOX)

結物語 (講談社BOX)

 

不老不死の人間はいませんと冒頭で宣言しておきながら、こちらの作品には不老不死の人間ではありませんがそちらに近い存在が出てきます。

しかしよく考えると不老不死であろうと周りが不老不死でなければ周りが死んでしまって結末は変わりません。自分が残されるか周りが残されるかが変わるだけです。

全く作品にも何も関係ない思考を吐露したところで、『結物語』に話を転じますと、こちらはまさに出会いと別れの物語です。阿良々木暦くんが新しいキャラクターと親睦を深める一方で、旧交を温めたり冷やしたりしています。私の認識では結びとは終息に通ずるものでしたが、終わる気配がないどころか新しいシーズンが始まることとなってしまいました。

無論ここで読むのも買うのもやめてしまうのは私の自由ですが、そしてそれが理性の訴えるところですが、風呂敷を広げられたところで立ち去るのを潔しとしない思いもあります。ままならないものです。

(以下、阿良々木暦くんの熱い台詞です)

大人になるのがつまらないとか、言ってられないだろ。臥煙さんも忍野も、伸び伸び生きてたじゃねえか  まあ、あの辺は例外だとしても、大人になるのは、基本的には楽しいことだ。風説課の人達を見ても、直江津署全体を見ても、それはそう思う。高校時代は楽しかった。今も楽しい。嫌なことは昔と同じで今もある。だけど解決してみせる。それでいいだろ

 

うめざわしゅん『パンティストッキングのような空の下』、伊坂光太郎『砂漠』

 

パンティストッキングのような空の下

パンティストッキングのような空の下

 

 

身も蓋もないような、考えさせられるような。そんな作品です。

特に「唯一者たち」の最後の方のやりとりが印象に残っています。

高校生の時に幼女に暴行未遂を起こし、10年越しにその幼女に謝ろうとしたものの、「絶対に許さない」という返事をされた主人公(洋一)が吐く台詞が以下のとおり。

苦しい…苦しい…

でもコレは…

あの子の苦しみとは関係なくて…

自分がそんなことをした人間で…この先もそうだってことが…苦しい

こうやって結局自分の苦しみしか苦しめないことが苦しい…

ずっと…ずっと…

なんで俺はこんななのか…なんで俺だけが…

なんで…

なんで俺は…生まれてきたのか…

 それに対する、謝るよう働きかけたルイという女の子の返事が以下。

私は生きてるのがすごく楽しい

冬は寒いけどたくさん服を選んで着れるし 近くにできたケーキ屋は大当たりだし もうすぐハンターハンター連載再開するし…川上さん(※ルイの恋人)は超優しいし…

将来は結婚して子供は二人で犬も飼って…

って欲張りすぎ?そんなうまくいかないよね!

でも そうねーあとはあんまり痛くなく死ねればいいかなァ

とにかく!私の人生超すばらしいよ!

でも…

生まれてこないで済んだなら それが一番良かったな

 誰だってそうじゃない?みんな自分だけが自分なんだから

 「私」という業を人間は生まれながらに背負っているのだということがよく分かります。でも分かったところでどうするのでしょう。よく分かりません。

 

 

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

 

 

高校の後輩に薦められて読みました。

一言でまとめるのであれば、大学生5人が砂漠に足を踏み出す前の青春を描いた作品です。その5人の中でも、西嶋くんが群を抜いて面白い。

そうやって距離を空けて、自分たちさえ良ければいいや、そこそこ普通の人生を、なんてね、そんな生き方が良いわけないでしょうに。ニーチェも言ってたじゃないですか。『死にもの狂いの剣士と、満足した豚からも等距離に離れていたところで、そんなのはただの凡庸じゃねえか』ってね

 

『人間とは、自分と関係のない不幸な出来事に、くよくよすることだ!』

 

あのね、目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。歴史なんて糞食らえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いてる人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ 

前半の百数十頁だけでこの調子です。これが面白くないわけがない。

とはいえ、西嶋くんだけではなく、他の4人もそれぞれ時が過ぎる中で変わっていくので、そちらもまた興味深いです。

私はもう砂漠にずぶずぶ嵌っていますが、ちったあもがいてやろうかなという気持ちになれました。

 

 

あ、ちなみに今回のテーマは「パンク」です。「これが現実だよ」とかしたり顔で言う大人になってはいけません。現実を殴っていきましょう。

北方謙三『水滸伝』、森博嗣『すべてがFになる』

埋没するのは容易く脱出するのは難しい。

それがシリーズ物である。まるで麻薬のようだ。

2017年は手を広げようと思っていたが、年末から2つのシリーズ物に迂闊にも手を出してしまったせいで、そちらの片が付くまで他に取りかかれそうにない。

 

一つ目は、北方水滸伝である。高校生か大学生のときに一度通読したものの、また読みたくなって手を出してしまった。たぶんモヤモヤしたものを吹っ飛ばしたくなり、こういう熱い物語を読みたくなったのだろう。年末は何かと過去を振り返ってしまうから。

19巻と長くはあるが、1巻1巻はさほど重くないので、するする読める。そこがまた憎い。手が止まらないのだ。

おまえがまずやることは、旅をしながら体力を回復することだ。それから、心の傷を内側に閉じこめておけるようになることだ。冷たい言い方かもしれぬが。

魯智深が奥方を亡くした林冲に放った台詞である。あるいは悲しみ一般に当てはまることかもしれない。)

 

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

 

 二つ目は森博嗣のS&Mシリーズである。こちらは『喜嶋先生の静かな世界』を読んで、また森博嗣の作品を読みたくなったというのが籠絡されたきっかけである。北方水滸伝とは異なり熱い物語ではないけれど、どこか純粋であるという点では似ている。

こちらは10巻だが、北方水滸伝より1巻1巻が重いので、なんだかんだ同じくらいのタイミングで読了しそうな予感がしている。

意味のないジョークが、最高なんだ。

この犀川先生の思想には大いに共感するところがある。ジョークたるもの空虚であるべし。

 

 

よくよく考えると、こちらが2017年最初の記事だった。今年もよろしくお願いします。

福本伸行『アカギ』、『中間管理録トネガワ』

「ざわ・・・ざわ・・・」をはじめとする独特な表現で人々を魅了してきた福本作品ではあるが、まさかスピンオフであるとはいえ「このマンガがすごい!」で1位を獲得する日が来るとは思っていなかった。

というかこの作品が1位で大丈夫なのだろうか。

言っちゃなんだが完全にギャグマンガなのだが・・・ 

中間管理録トネガワ(4) (ヤングマガジンコミックス)

中間管理録トネガワ(4) (ヤングマガジンコミックス)

 

とはいえ面白いのは紛れもない事実である。

原作では「もはやギャグだろ」としか思えないような大仰な表現を用いながらも飽くまで真剣勝負として描いていたのに対し、本当にギャグにしてしまったのが本作と言えよう。

ネットで数々のネタにされていたことからもポテンシャルは感じられていたが、作品にしたらまさかこんなにギャグにハマるとは。むしろこちらのほうが表現に沿った作品なのではないかと思ってしまう。

 

アカギ 33 (近代麻雀コミックス)

アカギ 33 (近代麻雀コミックス)

 

本家の作品も新刊が出ていた。

「1話で1牌打つか打たないか」で賭けが成立しかねないほどに進行が遅いことに定評がある『アカギ』だが、33巻でも期待を裏切らず数牌だけ打って終わった。

一体何巻でどんな終わりを迎えるのだろう。

吾妻ひでお『失踪日記』『失踪日記2アル中病棟』、卯月妙子『人間仮免中』『人間仮免中つづき』

生活リズムが乱れていたせいか、孤独な生活を長く続けすぎたせいか、何となく気分が落ち込むことが増えていた。 

しかし己より遥かに酷い境遇にある方々がそれでも前向きに生きているのを見ると、ほんの少しだけ元気が湧いてくる。

今回はそんな漫画を紹介する。

 

失踪日記

失踪日記

 

 

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟

 

鬱や不安で突然仕事を放り出して失踪したり、酒浸りになった末にアル中病棟にぶちこまれたりする様をコミカルに描いている。

これだけ悲惨な目にあっても笑えるように描けるということに凄みを感じた。 

 

 

人間仮免中

人間仮免中

 

 

吾妻ひでおのようにコミカルには描いていないけれども、統合失調症になり身も心も打ちのめされているにもかかわらず前向きに生きていこうという様が伝わってくる。

読むと暫く呆然としてしまうくらいには力強い。

 

 

どうでもいいが、どちらも1巻と2巻の色合いが似ている。最初は出版社が同じだからかと思ったが、『人間仮免中つづき』はイースト・プレスからではなく小学館から出ている。ふーむ。

ピーター・J・ベントリー『家庭の科学』、青木皐『人体常在菌のはなし』

私は率直に申し上げて科学が得意ではありません。

数式を見ると目眩がするとは言わぬまでも手が止まります。化学式は見てもちんぷんかんぷんです。現象のメカニズムや人体の仕組みもさっぱり分かりません。

しかし分からないながらも興味はあります。

せめて分かったつもりになれないか。

というわけで、今回は楽しく読める科学本を紹介します。

 

家庭の科学 (新潮文庫)

家庭の科学 (新潮文庫)

 

図書館でぶらぶらしているときにたまたま目につき、借りて読んでみたらこちらがめっぽう面白い。

ある男の一日を科学的に分析するというストーリーなのですが、もうこの男がびっくりするくらい悲惨な目にあいます。寝坊するわ鞄を忘れるわガムを髪にくっつけるわ日常生活で起こりうる惨事をこれでもかとばかりに経験します。そしてその原因や過程を著者が冷静に説明します。そのギャップがまた笑えます。 

同じ新潮文庫ですと、サイモン・シン氏のシリーズは以前興味深く読んだ覚えがあります。サイモン・シン氏は科学にまつわるエピソードを劇的に描くのが非常にうまいです。

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

 
フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

 

 

 

 

人体常在菌のはなし ―美人は菌でつくられる (集英社新書)

人体常在菌のはなし ―美人は菌でつくられる (集英社新書)

 

こちらは立花隆氏と佐藤優氏が次々と教養本を紹介していく『ぼくらの頭脳の鍛え方』で紹介されていて買った覚えがあります。そして購入以降しばらく放置していましたが、この度ようやく通読した次第です。

タイトルのとおり人体に常在している菌のお話なのですが、著者の菌愛が尋常ではありません。「かわいい常在菌」とか「菌が喜ぶ」とかそういう表現が頻繁に出てきます。しかも語り口がやたら軽い。

冬でも超ミニスカートで生足、ハイソックスという格好の女子高生。これもやめた方がいい。「大丈夫、流行りの毛糸のパンツ穿いてるから」といったって、やはり冷えるだろう。なかには生ヘソまで出している娘もいる。やめなさい。伊達の薄着は育菌違反なのである。私としては、菌虐待行為で逮捕したいくらいである。 

終始とは言わぬまでも、しばしばこんな調子です。こうしたノリが好きな方は楽しく読めるでしょう。あと上の書影にはありませんが、帯が『もやしもん』ですので、『もやしもん』ファンは必読……かもしれません。

 

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)