雑記

雑な記録。略して雑記。

考える葦

人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものである。だが、それは考える葦である。彼をおしつぶすために、宇宙全体が武装するには及ばない。蒸気や一滴の水でも彼を殺すのに十分である。だが、たとい宇宙が彼をおしつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分に対する優勢とを知っているからである。宇宙は何も知らない。
だから、われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。われわれはそこから立ち上がらなければならないのであって、われわれが満たすことのできない空間や時間からではない。だから、よく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある。

疲労は思考を鈍麻させる。しかし、尊厳を失ってはならない。

人間の偉大さは、人間が自分の惨めなことを知っている点で偉大である。樹木は自分の惨めなことを知らない。
だから、自分の惨めなことを知るのは惨めであることであるが、人間が惨めであることを知るのは、偉大であることなのである。

「わたしよわたしよなぜ生きる そんなに死ぬのが怖いのか」という言葉がいっとき脳内で反芻していた。なんと私は弱く惨めなのか。
しかしそれを知り、直視し、なお生きるのは偉大なことである。そう言い聞かせて、私は今日も生きる。

パンセ (中公文庫)

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