「イミテーション・ゲーム」
映画は暫く御免だと以前に申し上げたが、音と光が激しくなければ大丈夫であるはずだと信じ、「イミテーション・ゲーム」を観た。信じる者は救われるとの格言どおり、今回はそれほど頭痛に襲われることもなく視聴できた。
ぱっと思いつくこの作品のテーマは3つあり、天才、戦争、同性愛である。そしてそのいずれもが主人公アラン・チューリングを孤独に追いやっていく。輝かしい才能は周囲の無理解に晒され、より多くの命を救うためとはいえ、数多の無辜の命を見殺しにすることを余儀なくされ、本来自由であるはずの性的嗜好により法で裁かれた。その様子が過去と未来を行き来しながら描かれていく。チューリング自身は常に救いを求めているにもかかわらず、どうにもならない。確かに、チューリングは偉業を成し遂げた。同性愛も死後恩赦され、その学問的、社会的功績は誰もが認めるところとなった。しかし、全ては終わった後のことである。
ところで、振り返ってみて気になるのはチューリングの家族についてである。映画ではチューリングはずっと天涯孤独であり、家族は一切出てこない。伝記を読んだらそのあたりのことも分かるのだろうか。
笑顔
- 作者: 石川雅之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/03
- メディア: コミック
- 購入: 31人 クリック: 418回
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暇に任せて迷走に迷走を重ねているうちに残業の嵐に呑まれ今度は頽廃を極めつつありますが、過去という地から足を離してしまわないよう、昔読んだ漫画やら本やらを少しずつ読み直しております。
その中の1冊(というか1シリーズ)が『もやしもん』。ユルユルダラダラというのは私の性格によく合います。
寝る前にチマチマ読んだり、休みの日にゴロゴロしながら眺めたりしているうちに、漸く2桁巻に到達しました。
10巻はアメリカ編。異質の文化に触れることで、イブニング誌上最も影の薄い主人公こと沢木直保も、己と向き合う様を描かれることとなります。
そんな直保に、室町時代から続く家を出奔しアメリカで放浪している自由人の兄直継の吐く台詞が、私には印象的でした。
お前は昔から友達の輪でも一歩引いて立ってたよなァ
どっか冷めてて腹から笑ってるように見えなかった
笑顔だよ直保
笑えば楽しいぞ?
おー直保ー
笑ってるかー
オレは笑顔だぞー
分かるか直保ー
アメリカでも日本でもどこでもいいんだぞ
お前のいる処がお前の世界の中心なんだ!
お前が回すんだぞー
いい仲間いっぱいいんじゃねェか
人のはじっこに乗っけてもらって回ってんなよ?
俺はどこにいても何やってても
沢木直継だぜ
時に不満や自己嫌悪の波にさらわれそうになりますが、呵々と笑って他人に感謝しながら己が道を貫いていきたいものです。
佐藤優『人に強くなる極意』、森博嗣『夢の叶え方を知っていますか?』
どうにもこうにも調子が出ない。
そういうこともあります。
そんな時、生活リズムを整えるとか栄養バランスの良い食事を摂るとかそういった正攻法もあります。が、たまには奇をてらって新書、しかもハウツー本を読むという気分転換を図るのもありかなと。
というわけで、今回はたまたま家にあった新書と本屋で目についたハウツー本新書をご紹介します。
8つの「ない」から人に強くなろうという本です。
怒らない、びびらない、飾らない、侮らない、断らない、お金に振り回されない、あきらめない、先送りしない。
当然と言えば当然のことが書いてありますが、不調というのは当然のことができなくなることを言いますので、そういった意味では良いチョイスでした。
内容は題名のとおり、夢の叶え方について。
これまた当たり前と言えば当たり前なのですが、夢というのは自分のものであって、そこに他人を介入させては他人の夢になってしまいます。
そういうことをよくよく分からせてくれるので、他人に流されやすい方が読むといいかもしれません。
体力
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2017/01/13
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人につき合わない。食事は自分のペース。毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きる。どんなことがあっても、無理はしない。それが、僕の肉体の使い方なのである。
森博嗣氏は30年以上この肉体の使い方を守り続けているという。
体力がないということを自覚しているが故に、管理を徹底する。
言われてみれば当たり前だけれど、私はどうにも己の修行不足を棚に上げているように思えて実践してこなかったが、事ここに至って漸く努力の問題ではない(努力するにしても割りに合わない)と思えてきた。
これまた当たり前だが、人はそれぞれ違う。その人の素質というものがある。どんなに不規則な生活をしても平気の平左である人もいれば、少し無理をしただけで音をあげる人もいる。
といっても、素質だけで全てが決まるわけではない。幼い頃ずっと病弱だった方が、少しずつ訓練し、今では徹夜で実験したりマラソン大会に参加したりする、なんていう話を聞いたこともある。なので、改善は不可能というわけではないのだろう。
だが、それでも改善するには多大な労力を必要とする。しかも改善は確約されていない。やはりどうにもならなかったということで終わる恐れもある。そう考えると、森博嗣氏の肉体の使い方を見習うのが最善に思える。
ただ、自分は大いに他人に流されやすい。ついダラダラと他人に付き合ってしまう向きがある。出された食事は多少無理をしても食べてしまう。
しかし、これは己の意思次第でどうとでもなる。やるしかない、と己に言い聞かせることとする。
推薦図書
先輩、友人、後輩に近頃薦めてもらった書籍を備忘として貼っておきます。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/09/03
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- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/06/28
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- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/07/31
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模倣犯 全5巻完結セット (新潮文庫) [文庫] by 宮部 みゆき
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- 作者: 宮部みゆき
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- 作者: 秋川滝美,しわすだ
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- 作者: 庄司薫
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Who Gets What (フー・ゲッツ・ホワット) ―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学
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焦らずとも本は逃げ出しませんので、ぼちぼち読んでいきます。
渡辺ペコ『にこたま』、西尾維新『結物語』
さよならだけが人生だ。そんなフレーズがあります。
私の知る限り不老不死の人間はいませんので、いずれ誰でも死という終着点に至り、この世の縁とはおさらばします。その意味でこのフレーズは正しい。仲が良かろうと悪かろうと、疎遠だろうと身近だろうと、最終的にはバイバイが待っています。
しかしながら、生きているその間においては、別れもあれば出会いもあります。人生という大きな括りでは別離に集約されてしまいますが、括ってしまうまでの道中には幾多の結びつきの生成消滅があるでしょう。一度別れた人と再び付き合うこともあれば、その再び付き合った人と別れてしまうこともあります。
それを諸行無常と悟れれば楽なのでしょうが、なかなかそううまくはいきません。
こちらは友人の恋人さんに紹介していただきました。
どうしても私は「にこたま」と言うととある駅名を思い浮かべずにはいられないのですが、どうも世間では違うようです。
それはさておき、こちらの『にこたま』は、「長年うまくやってきたカップルの片割れがやらかしてしまい、はてさてどうする」というお話。
理性と感情のすれ違いが上手に描かれており、冷静に振り返ると話の展開はかなりぶっ飛んでいるのですが、読んでいる最中は自然な進行に思えます。人生と同じですね。
(以下、浮気されてしまったあっちゃんとその女友達の会話)
人の心ってそもそも自由なものだよね?
あたしたちは自由な意思と選択によって一緒にいるけど
別に契約や約束をしたわけじゃないし
あたしが怒ったり妨げたりする権利ってそもそもないんだよなあって
でもあっちゃんかなしくなかった?
……かなしかったよ
一緒にいる大事な相手を
不愉快にさせたり悲しませないっていうのはルールじゃなくてマナーとモラルだよ
約束や契約がなくても信頼があるならそれ破っちゃダメだよ
不老不死の人間はいませんと冒頭で宣言しておきながら、こちらの作品には不老不死の人間ではありませんがそちらに近い存在が出てきます。
しかしよく考えると不老不死であろうと周りが不老不死でなければ周りが死んでしまって結末は変わりません。自分が残されるか周りが残されるかが変わるだけです。
全く作品にも何も関係ない思考を吐露したところで、『結物語』に話を転じますと、こちらはまさに出会いと別れの物語です。阿良々木暦くんが新しいキャラクターと親睦を深める一方で、旧交を温めたり冷やしたりしています。私の認識では結びとは終息に通ずるものでしたが、終わる気配がないどころか新しいシーズンが始まることとなってしまいました。
無論ここで読むのも買うのもやめてしまうのは私の自由ですが、そしてそれが理性の訴えるところですが、風呂敷を広げられたところで立ち去るのを潔しとしない思いもあります。ままならないものです。
(以下、阿良々木暦くんの熱い台詞です)
大人になるのがつまらないとか、言ってられないだろ。臥煙さんも忍野も、伸び伸び生きてたじゃねえか まあ、あの辺は例外だとしても、大人になるのは、基本的には楽しいことだ。風説課の人達を見ても、直江津署全体を見ても、それはそう思う。高校時代は楽しかった。今も楽しい。嫌なことは昔と同じで今もある。だけど解決してみせる。それでいいだろ
うめざわしゅん『パンティストッキングのような空の下』、伊坂光太郎『砂漠』
身も蓋もないような、考えさせられるような。そんな作品です。
特に「唯一者たち」の最後の方のやりとりが印象に残っています。
高校生の時に幼女に暴行未遂を起こし、10年越しにその幼女に謝ろうとしたものの、「絶対に許さない」という返事をされた主人公(洋一)が吐く台詞が以下のとおり。
苦しい…苦しい…
でもコレは…
あの子の苦しみとは関係なくて…
自分がそんなことをした人間で…この先もそうだってことが…苦しい
こうやって結局自分の苦しみしか苦しめないことが苦しい…
ずっと…ずっと…
なんで俺はこんななのか…なんで俺だけが…
なんで…
なんで俺は…生まれてきたのか…
それに対する、謝るよう働きかけたルイという女の子の返事が以下。
私は生きてるのがすごく楽しい
冬は寒いけどたくさん服を選んで着れるし 近くにできたケーキ屋は大当たりだし もうすぐハンターハンター連載再開するし…川上さん(※ルイの恋人)は超優しいし…
将来は結婚して子供は二人で犬も飼って…
って欲張りすぎ?そんなうまくいかないよね!
でも そうねーあとはあんまり痛くなく死ねればいいかなァ
とにかく!私の人生超すばらしいよ!
でも…
生まれてこないで済んだなら それが一番良かったな
誰だってそうじゃない?みんな自分だけが自分なんだから
「私」という業を人間は生まれながらに背負っているのだということがよく分かります。でも分かったところでどうするのでしょう。よく分かりません。
高校の後輩に薦められて読みました。
一言でまとめるのであれば、大学生5人が砂漠に足を踏み出す前の青春を描いた作品です。その5人の中でも、西嶋くんが群を抜いて面白い。
そうやって距離を空けて、自分たちさえ良ければいいや、そこそこ普通の人生を、なんてね、そんな生き方が良いわけないでしょうに。ニーチェも言ってたじゃないですか。『死にもの狂いの剣士と、満足した豚からも等距離に離れていたところで、そんなのはただの凡庸じゃねえか』ってね
『人間とは、自分と関係のない不幸な出来事に、くよくよすることだ!』
あのね、目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。歴史なんて糞食らえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いてる人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ
前半の百数十頁だけでこの調子です。これが面白くないわけがない。
とはいえ、西嶋くんだけではなく、他の4人もそれぞれ時が過ぎる中で変わっていくので、そちらもまた興味深いです。
私はもう砂漠にずぶずぶ嵌っていますが、ちったあもがいてやろうかなという気持ちになれました。
あ、ちなみに今回のテーマは「パンク」です。「これが現実だよ」とかしたり顔で言う大人になってはいけません。現実を殴っていきましょう。