読書記録

読んだ本の内容を思い出せないことが増えてきたので、何でもいいから記録を残すことにしました。ネタバレもありますのでご注意ください。

荒川弘『銀の匙』、『百姓貴族』

年度初めのドタバタが一段落しますと漫画を読む余裕も出てきます。 

 

札幌の進学校でバリバリ勉強しすぎて逃げ出してしまった主人公八軒が農業高校に入ってドタバタする漫画です。名言も数多くありますがそちらの紹介はNAVERまとめにでも任せるとして、八軒の考えることを止めない姿勢には心を打たれました。どうしても苦しいと思考放棄してしまいがちですが、進捗があるかないかはともかく取り組み続けるというのはなかなかできることではありません。とかく目の前の成果ばかりに囚われがちですので見習いたいものです。

わかろうとする努力はやめたくない

 

農家の日常ドタバタを描いたエッセイ漫画です。『銀の匙』ではシリアスなシーンもしばしば出てきますが、こちらは徹頭徹尾コメディーです。いや、内容は笑い事ではない気もするのですが。親父殿はいったい何度死の危機に瀕し家畜を身代わりにすれば気が済むのか。

 

 

農業の話を読むと少し憧れなくもないのですが、高坂勝『減速して自由に生きる』にあるようなゆるふわ農法ならともかく、ガチ農家は体力的にとても不可能ですね。ちょっと無理するとすぐ寝込みますから。あれ、そう考えると今の仕事はパラダイス?(錯乱)

高坂勝『減速して自由に生きる』、大原扁理『年収90万円で東京ハッピーライフ』

たまに無性に働きたくなくなります。

とにかく休みたい。だらだらしたい。税金を納めるとか社会に参加するとかどうでもいい。好きなだけ寝て好きなだけ食べて好きな人とだけ遊んで暮らしたい。

とはいえ、さすがに働かなければ生きていけません。特別なスキルを持っているわけでもなければ養ってくれるパートナーがいるわけでもありませんから。

それでも、何らかの形で発散しないと爆発しそう。

というわけで、以下の二冊を読んでみました。ついでにpha氏の著作やら『34歳無職さん』やらを再読してみたり。

バリバリのサラリーマンから週休三日のバーのマスターに転身した方の本。

といっても、何もかも放り出してだらだらするというよりは、マイペースで色々楽しむという雰囲気で、バーは週休三日でも著者の方は多方面で活躍されているようです。

なお、そのバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」は来年の3月で閉店とのこと。それまでに寄れたら寄ってみたい。

 

年収90万円で東京ハッピーライフ

年収90万円で東京ハッピーライフ

 

こちらは筋金入りの隠居マンといった趣です。

サラリーマンだった時期もないようで、己の道を貫いた結果タイトルのような生活に至ったそうな。といっても順風満帆というわけではなく、語り口こそ軽いものの、この作品で語られる過去は壮絶です。

 

 

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

 

相変わらずpha氏の文章は読むと落ち着きます。

幻冬社plusで連載されていた「移動時間が好きだ」もなかなか良いです。サウナに行ってみようかという気持ちになります。

 

一言で要約すれば「34歳無職のお姉さんの日常」なのですが、それが何とも味わい深い。私も無職になったらこんな感じなのかななどと思います。

秋★枝『恋は光6』

 

恋は光 6 (ヤングジャンプコミックス)

恋は光 6 (ヤングジャンプコミックス)

 

文字通り悶絶しました。

それぞれが関係を保とうとしながらも、己に正直になればその関係を危険に晒さざるを得ない、そのことに対する葛藤。そして唐突に放り込まれた爆弾によって動き出す物語。読んでいる側としては悶絶するほかありません。

しかも次巻で最終巻だという。こちらからどう着地させていくのか。楽しみでもあり怖くもあり。

5巻のときに「感想を整理する」などと嘯いておりましたが、この分ですと最終巻が終わって暫くしないと纏まりそうにありません。ちょうど今年度が終わりますと自分にとって一つまた転換点が訪れますので、その際に諸々何かしらの区切りをつけたいものです。

散々ゴチャゴチャ転げ回っていたのに突然ピタッと止まるのは無理でしょうが、せめて止まったフリだけでもできますように。

北方謙三『水滸伝』

貴君、終わったよ、終わった 

 先日まで「四畳半神話大系」のアニメを観ていた身としては、そんな台詞を吐きたくなります。

 

 

水滸伝 文庫版 全19巻+読本 完結BOXセット (集英社文庫)

水滸伝 文庫版 全19巻+読本 完結BOXセット (集英社文庫)

 

ついに、ついに読み終わりました。全19巻。長かった、あまりにも長かった。1巻350頁として実に6650頁です。厚くて熱い物語でした。

 

 

最初は北方水滸伝のエネルギーを求めて読み始めたつもりだったのですが、読み進めるうちに勝敗とか強さ・弱さとかいったものについて考えるために再読し出したのではないかと思えてきました。

というのは、北方水滸伝は戦に次ぐ戦の物語ですから、戦の都度勝敗が決まります。しかしながら戦における勝敗は将棋のように一方が完全勝利で一方が完全敗北ということはありません。

双方が犠牲を出します。じゃあ犠牲の多寡で決まるかと言ったらそうでもなく、彼我の軍の規模が違えば同数の犠牲でもどちらかに軍配が上がることはあるでしょう。

その戦を評価する主体によっても勝ち負けが変わることもあります。民から見たら梁山泊の勝利でも実際は負ける寸前だったなんてシーンもありました。

また、梁山泊の豪傑は皆強すぎるほどに強い一方で、それぞれが弱さを抱えています。そしてその弱さについて、各々の仕方で克服したり折り合いをつけたりする。

雑に纏めれば、そうした物事や人の多様性を存分に味わいたかったということになります。

 

 

それから読了して思ったのは、料理とか傷の治療とかの細部から経済やら政事やらの大局まで実にリアリティ溢れる一方で、青臭い理想を漢たちが追求していく、その現実とロマンの両立が素晴らしいということです。

ただ現実の汚い部分を克明に描写してドロドロしているだけでもなく、ただ美しいお花畑を展開しているだけでもなく、如何ともしがたい現実の中でそれでもなお理想を具現せんと尽力する。その様は読む私に生きる勇気を齎してくれます。

 

 

ざっくりと感想を述べれば以上のようになりますが、勢いで読んできたところもありますので、これから読本(『替天行道』)を読みつつのんびりと振り返ります。

ところで、北方水滸伝の続編である『楊令伝』を見たらこちらも15巻もあるんですね。いやはや、どうしたものか。

 

 

 

 

榎本まみ『督促OL日記』

 

督促OL 修行日記 (文春文庫)

督促OL 修行日記 (文春文庫)

 

佐藤優『人に強くなる極意』で紹介されており、気になって読んでみました。

「督促」という特異な仕事の紹介も興味深いですが、それ以上に気弱なN本氏が督促道を少しずつ極めていく方法が非常に参考になります。

「怒鳴られたら足をつねる(又は足を踏ん張る)」「厳しいことを言っても最後は優しい言葉で締めると印象が良くなる」「謝るばかりでなくお礼を言う(比率は2対1がよい)」など実践的なアドバイスが盛りだくさん(鉤括弧をつけていますが適当に言い換えておりますので本文そのままの引用ではありません。次の鉤括弧もそうです)。

個人的には「悪口を記録につけて、一定以上溜まったら自分にご褒美を与える」というのに最も感心しました。通常ならマイナスにしか思えないことを発想の転換でプラスに捉えられるというのはすごい。マイナスを避けるに越したことはないのですが、避けようのないマイナスはいっそのこと楽しんでしまうというのは応用の利く知恵かもしれません。

今はそれほど他人と衝突しない仕事をしていますが、いざ戦場まがいの部署に放り込まれたら本書を読み返して切り抜けていきたいものです。

 

 

川崎昌平『自殺しないための99の方法』、田中圭一『うつヌケ』

私は自殺だけはすまいと心に決めておりますが、弱すぎるほどに弱いためにたまにその決意が揺らぐことがあります。

大半は一過性のもので、時が過ぎるのに任せるうちに徐々に己を追い詰める気持ちが薄まっていくのですが、「時が過ぎるのに任せる」といっても、目の前の仕事やら何やらがあると改善どころか悪化の一途を辿ることもなきにしもあらず。

とはいえ、周りの助けがあったり必殺技「現実逃避」を駆使したりして今までは乗り越えてきましたが、もう少し上手に自分と付き合う方法があるのなら知りたいものです。

 

自殺しないための99の方法

自殺しないための99の方法

 

そのものズバリ、自殺しないための99の方法です。表紙はそのうちの一つである「カラの湯船に入る」というもの。これだけ見ると奇を衒っているだけのようですが、もくじを見ると第1章「自殺する可能性を遠ざける」第2章「自殺しないように身を守る」第3章「自殺しない未来をつくる」とまとも(?)なことが書かれています。

自殺などという考えが頭をよぎるときは文章を読めなくなることもままありますが、本書は見開きの左側に絵、右側に短い文章と、脳への負担が少ない構成になっている点でもありがたい。絵も(良い意味で)簡潔なので見ていると力が抜けます。枕元に置いておいて、つらいときにパラパラ読むといいかもしれません。以下、テキトーにいくつか引用しておきます。(引用して気づきましたが、もくじにあるのは章だけで、99の方法の索引はないのですね。自分で書き出してみるのも楽しいかもしれません。)

13「大丈夫だよ」と口にする

14「わかりません」と口にする

32他人の仕事に感心する

33興味のないジャンルについて調べる

39失敗を楽しむ

40困ったら笑う

49言い訳はしない

59感謝をする

65比べない

82転んでみる

84断られることを楽しむ

98できないことをどんどんつくる

 

ちなみに同じ著者の『重版未定』も中々に身も蓋もなく面白いです。

重版未定

重版未定

 

 「インド人を右に」レベル?

 

 

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち

 

こちらは友人様が紹介されているのを拝見して読んでみました。友人様には幾度となく精神の危機を救っていただいたので、その友人様が紹介される書籍なら間違いはありません。

内容としましては著者を含む方々のうつトンネルを抜けた体験談を漫画にしたものです(1話だけ精神科医の方がうつ病について語っているものもありますが)。多彩なエピソードに基づいた具体的なアドバイスが参考になるのは勿論、中には大槻ケンヂやら内田樹といった世間知らずの私でさえ名前だけは聞き及んでいる方々もおり、そうした大物でさえ(当然といえば当然ですが)一人のちっぽけな人間なんだなあと思える点でも有益な書物です。

よく考えてみてください

物事を悪い方に考える人は危機を回避しやすく生き残る確率が高い

太古にそうやって生き残った人たちの子孫が私たちなんです

つまり今私たちがネガティブなのはあたりまえ!

だからネガティブな自分は優秀なのである!

…くらいに自分を肯定していいと思うんです

宮部みゆき『火車』

 

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

 

 

新潮文庫にして、およそ700頁弱。中々の長編である。

しかし二転三転する展開は読者を次の頁へ次の頁へと導いてくれる。私はこれまで全く宮部みゆき作品を読んだことがなかったが、例によってスローペースではあったものの、ぐいぐい読まされた。

この作品はフィクションではあるものの、とことん現実的である。カード社会という題材もそうだけれど、その題材の料理の仕方も「あんなプラスチックのカードが生む幻などに騙されてはならぬ」といった単純なものではない。善悪はともかく、カードは一大産業となっている。一度走り出した以上、止めることはできない。自動車のように。しかし、そこで事故を起こした人を、全て自己責任としてしまうのもまた違う。誰でもふとしたはずみに事故を起こしうる。他人事ではないのだということが、作品を読むとひしひしと分かる。

私は本作を二度別の方から推薦されているが、確かに本作は他人にオススメしたくなる作品である。物語として面白いのはもちろん、勉強にもなる。安心して推せる一作である。