雑記

雑な記録。略して雑記。

将棋ボーイズ

小山田桐子『将棋ボーイズ』(幻冬舎文庫、2014)に最初から最後まで目を通した。

一度職場の近くの書店で買おうか買うまいか散々悩んだ挙句、近所の書店であったら買おうと思ってスルーしたものの、近所の書店でチェックする機会がなかった。そして再び職場近くの書店に寄った時、相変わらず目立つ位置にあったのでえいやっと買ってしまった。こうしてまた家のスペースがなくなっていく。

肝腎の内容はというと、私は高校将棋部の雰囲気をよく知っているので楽しめたが、何も知らない方が面白く読めるかは分からない。

少し内容に触れると、主人公は倉持謙太郎と栗原歩という高校生二人である。倉持謙太郎は将棋は滅法強いが闘争心に欠ける一方、栗原歩は愚直に努力するものの中々成果を出せない。そんな二人が岩北高校将棋部に入って少しずつ変わっていくというお話である。漫画でいうと『ハチワンダイバー』よりは『3月のライオン』に近い。将棋そのものを面白くするというよりは将棋に関わる人々の様子を描いていく。そのせいかいまいち盛り上がりには欠ける。二人の主人公がいるおかげで焦点が定まらないのも人によっては減点対象になるかもしれない。

しかし岩手高校という実在の高校をモデルにしていると思えば、その煮え切らなさにも納得がいく。本書は小説としてではなくドキュメンタリーとして読むべきなのだろう。

以下折角なので少しだけ引用。

(引用者注:顧問の本郷先生の台詞)「早く強くなりたいねえ……お腹がすいていない時って、美味しいものを食べても美味しくないだろ」(p.35)
本郷先生は、何となく言いたいことは分かるのだけれど、うまいことを言おうとして失敗している印象。この台詞も「舌が肥えていないからまだ味が分からないだろう」の方が言いたいことがすっきり伝わるように思う。他にも本郷先生の謎めいた台詞はあるのだが詳しくは読んでのお楽しみということで(探し出して写経するのが面倒という本音には触れてはいけない)。

(引用者注:倉持の台詞)「まあ、実際は大したことがない問題でも、解決までの時間が長くなればなるほど、その時間の分、本人にとっては解決しづらくなっていくからね。国同士の問題も、時間が経つほどこじれてったりするし」(p.260)
これが高校生の台詞かいなと突っ込みたくなるが、自分も含めてうじうじ悩みがちな人は読みながらうんうん頷くのではないか。


以上。