ドルリー・レーン四部作(の非常に個人的な感想)
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つい先ほど読了した。余りにも結末が衝撃的過ぎて言葉を失っている。残った謎に対し残った頁数が少ないとは感じていたものの、まさか……唖然呆然とするほかない。『斜め屋敷の犯罪』と同じ感想になってしまうが、ネタバレの前に読み通せて本当に幸運だった。
私は「ミステリ」=「名探偵が鮮やかに事件を解決する後味の良いもの」という方程式をいつの間にか脳内で構築していたけれど、このシリーズにはまるで当てはまらない。名探偵ドルリー・レーンは毎度見ているこちらの胸が痛くなるほど懊悩する。卓越した頭脳を以て真理にいち早く近づくものの、それがために苦しむ。しかし、逃げずに向き合い、自らの最善を貫く。それが通俗の倫理に悖るとしても。
レーンは良識ある老優である。その人が人倫に反する行為をするのにどれほどの覚悟が必要か。私は想像すると心が震える。『レーン最後の事件』の最後の行まで目を通した時は涙を流すのも忘れて放心してしまった。
謎解きとしても一級品だけれど、私はこのレーンの覚悟に感動せずにはいられない。願わくば、彼の勇気の一部でも自分に分け与えられんことを。